わたしの幼いときの記憶に
生まれたとき住んでいたアパートの前で
泥あそびをしていた風景があります
ひとりでペタペタしていたら
おとなりのKちゃんのお母さんが
通りがかって
なにつくってるの?
と声をかけられて
お好み焼き!
と言ったら
あら そう
あとで食べさせてね
とKちゃんのお母さんは
言いました
そんな小さな出来事が
半世紀以上たったいまも
あざやかにわたしのなかに残っています
だれかになにかをきくというのは
どういう行為なのでしょうか
自分のことをきいてほしくてきっかけにするとき
相手を責めてしまうとき
ふしぎにおもうことがあるとき
そして
結果的に相手に愛情をあたえる行為でもあるでしょう
Kちゃんのお母さんの質問は
それではなかったかとおもいます
長田弘さんの質問が
綴られるこの絵本
なかでも新鮮だったのは
あなたにとって「わたしたち」というのは、
誰ですか
というものでした
いままでそんなことを考えたこともなくて
はあ そういえば だれだろうな
とおもいました
いせひでこさんのしずかな絵と
この絵本の世界にはいっていくと
はて わたしはだれなんだろう
わたしの世界は どんな世界なんだろう
と おもわずにはいられません
詩人ってすごいなあ
最初の質問
詩 長田弘 絵 いせひでこ
講談社
本体1,500円
山口 敦子
リブロ 新大阪店