この絵本を最初に読んだとき
えーと
どうしてこれが名作と言われるのか
よくわからないな
という気持ちでした
娘が小さかったころ
いろんな絵本を
これよんで
とわたされましたが
そのなかにたびたびこの絵本がありました
そうして
なんども なんども
このモノクロームの絵の世界に
ふれていると
やがて
ふくふくとあたたかい気持ちになりました
もりのなかを動物たちと
歩く(パレードする)おとこの子
のシンプルなストーリー
いつか
読んでいるわたしたちも
もりにいざなっててくれていたのです
ずいぶん前に
ドイツ児童文学の翻訳家の方の
講演会に行ったとき
わたしたちには
フィクションが必要なのです
それはわたしたちの目の前の現実を
一度離れて
フィクションの世界に遊び
もどってきたとき
現実を見る目が変わるからです
高いところから
見えるようになります
というようなお話をされたのが
うかびました
あとから知ったのですが
これを描いたとき
エッツにはつらい出来事が
あったのだそうです
生きていると
苦しいなあ
つらいなあ
とおもうときがあります
そんなとき
物語はそっとわたしたちを
もりのなかに
つれ出してくれます
それは逃げるというよりは
(逃げるのが悪いわけではないのだけれど)
そこなってしまった自分を
とりもどす感じがします
福音館書店の松居さんは
最後に出てくるおとこの子のお父さんが
ただものではない
と言われていました
子どもの世界を
こわさずに
こういう言葉をかけることができる
大人だからだそうです
わたしも
そんな大人になりたいな…
ちいさな子どもも
大人もたのしめる
ふところの深い一冊です
もりのなか
マリー・ホール・エッツ 間崎ルリ子
福音館書店
本体1,000円
山口 敦子
リブロ 新大阪店