桐野さんの前作『砂に埋もれる犬』で引き込まれ、新作も手に取りました。今回の作品は代理母出産の話です。楽しい話ではありませんが、母になるということと、命の尊さを教えてくれる小説です。
また、登場人物の性格が現在の社会を表しているなと思いました。同性愛者は出てこないのですが、LGBTQIAと言う言葉が出てきます。「QIA」とは、異性にも同性にも恋愛感情を持たない人を表しています。そのQIAが主人公の友人なのですが、読み始めたときはあまり好感をもちませんでした。彼女の発する性的な表現が露骨なので、不快に思う方もいらっしゃるかも知れません。しかし、読み進めていくと、その友人が誰よりも芯が通っているなと思います。読み終わったときには、1番好感をもちました。
テーマは重たいですが、少子化や貧困にも関わることなので、知るきっかけとして、手にとってみてくださいませ。
燕は戻ってこない
桐野夏生
集英社
嘉納 芙佐子
リブロ 江坂店