イラストなどの賑やかな表紙が並ぶ新刊コーナーに、『方舟』はシンプルに文字だけが書かれていて、浮きだって見えました。気になったら、あらすじなど関係なく読みたくなる性分です。舞台は使われなくなった地下施設。まるで潜水艦のような形のその施設に閉じ込められてしまった12人の運命は!?無事、生還できるのか!?と、書くとすごく単調な密室事件なのですが、すごいです。
どの時代にも通用するミステリー小説です。殺し方は至ってシンプル。すべて艦内にあるものが使用されます。誰が探偵役かもハッキリしています。怪しそうな人物もハッキリしています。全てがハッキリしているのに、最後の最後まで犯人が分かりませんでした。探偵役は程よく焦らし、説明するときは分かりやすく説明してくれるので、自分も艦内にいる内の1人になった気分で読み込んでしまいました。推理をしながら読むタイプの方も、純粋に本を楽しむ方もどちらのタイプも方も楽しめます。
帯にはたくさんの著名な作家さんたちのコメントが書かれています。こちらのコメントは、本編を読み終わってから読んでほしいです。何かしらが起こることが書かれているので、そこは構えずに本編を楽しんでもらってから、この作家さんのコメントが私には1番しっくりくるかも。と、楽しんでもらえたらお得感が増すかなと思います。ちなみに、私は青崎有吾さんのコメントがしっくりきました。
方舟
夕木春央
講談社
嘉納 芙佐子
リブロ 江坂店