好きな作家さんの本は発売日が発表されたり、予約ができるようになったら予約をするようになりました。内容の好みの当たり外れはありますが、今回はどんなお話かな。という楽しみができました。薬丸さんの本が好きで、新刊の『罪の境界』もすぐに予約しました。
無期懲役になりたかった若者の無差別殺人事件についてのお話です。無期懲役になるためなら誰でも良かった。この理由は小説の中だけではなく、現実でも実際に起こっています。何故犯人はそんな心境になるまで追い詰められたのでしょうか?家庭環境や生い立ちなど、様々な理由はありますが、それなら仕方ない。とはなりません。被害にあって人生をめちゃくちゃにされた女性目線と、犯人側のライターさんの目線で話は進んでいきます。
被害者はいつまでも立ち止まっていられません。生きているので、頑張って進まないとだめなのです。が、それも当事者じゃないから言えることなんだなと。同じような被害に合われた方は、似ているだけでその事件の当事者にはなれないのです。その心の葛藤の表わし方がすごく重かったです。
ライター側は何故犯人について調べ始めたのでしょうか。この辺りにも物語があるのですが、それはぜひ読んでみてくださいませ。犯人は自身の望む結果を得られたのでしょうか。被害者は自身の足で歩き始めることができたのでしょうか。テーマは面白くも明るくもありませんが、読みやすい作品でした。
罪の境界
薬丸岳
幻冬舎
嘉納 芙佐子
リブロ 江坂店