完全なる白銀

小学生の夏休みの思い出は登山でした。母の故郷の山脈を１週間ぐらいかけて歩くのが楽しかったです。夏とはいえ山頂には雪が残っていたりしたのですが、絶対に近づいてはダメだときつく言われ続けていたので、山の雪は怖いものなんだと染み込んでいます。

アラスカの山脈で行方不明になった友人を探しに行った写真家の主人公。友人と過ごした過去と、探しに行っている今が、交互に描かれています。友情や葛藤、温暖化の社会問題など、作品の中にたくさんの要素が含まれているのですが、難しくなくすっと頭に入ってきます。

私は映像でしか、吹雪いている雪山を知りません。なので、イメージや印象でしかないのですが、後半で確かに頭の中に真っ白な白銀の世界が表れるのです。稚拙な例えなのですが、“ブワッ”と表れるのです。“あぁ、これかも知れない。”と、何故か目頭が熱くなりました。この本を通して自然の怖さと美しさを体感してもらえたらなと思います。

完全なる白銀
岩井圭也
小学館