仕事に疲れて死のうと決めた主人公。死に場所を求めて北へ。でもあまり遠いのは嫌なので、住んでいるところから2時間ほどで行ける距離で。死のうと思った理由が軽いとは思いません。そこの設定はしっかりとしているのですが、何せ行動が伴っていなくて、微笑ましく読んでしまいました。
海を眺めるのは好き。でも泳げないから近づきたくない。近くで見て、こんな所に落ちたら溺れ死んじゃう!と泣いてしまう。「え?死にに来たんだよね?」って、少し意地悪を言いたくなるぐらい可愛らしい主人公です。
何かしらの希望ややりたいことを見つけるわけでもなく、船に酔っては吐き、呑みすぎては吐き…、新米の美味しさと、鶏肉の歯ごたえに気付く主人公。日本で1番幸せな自殺志願者の小説だなと思います。お仕事に疲れたらぜひ京都の日本海側へ。美味しいご飯と満点の星空が迎えてくれるでしょう。
天国はまだ遠く
瀬尾まいこ
新潮社
嘉納 芙佐子
リブロ 江坂店