希望が死んだ夜に

何の接点も見つからないクラスメイトを“殺した。”と自供したところからこの物語は始まります。お互いに片親。１人は母子家庭で、もう１人は父子家庭。１人はご飯もまともに食べられない、制服もしわくちゃ。もう１人は成績優秀で吹奏楽部のエース。死んだのは後者です。

なんで同じ片親なのにあなただけ！！と、勢いで殺してしまったのでしょうか。もちろんそんな単純な物語ではありませんでした。メインは子どものネグレクト問題を取り上げています。ここに出てくる登場人物は共感できないところはありますが、何かしらの“強さ”を持っています。友情や愛情などは目に見えないので大きさなど分かりませんが、読んでいてなんて強い絆で結ばれているんだ、と。作者さんが伝えたかったことから少し脱線したかもしれないですね。そんなところで感動もしました。

目に見えないものは証拠になりませんし、実証することもできません。が、そこをつき詰めて捜査をした真壁と仲田ペア。引き込まれる作品なので、ぜひ手にとってほしい１冊です。

希望が死んだ夜に
天祢涼
文藝春秋