告解

物語は主人公の大学生が飲酒運転をし、高齢の女性をひき逃げしてしまったところから始まります。なんで飲酒運転をしたのか、本当のことを大学生はずっと言わずに裁判はつつがなく終わりました。小説ではよくこの辺りにまず本当はどうだろう？など調べることが多いのですが、あっさりとすすんだところに好感がもてました。

どんな事情であれ、ひき逃げしたことは変わりません。容疑者も自分の罪を軽くしたくて黙っていたわけでは無いので、より良かったのかも知れません。刑務所を満期出所した大学生はどんな人生を歩むのでしょうか。そして被害者側の遺族は、このやるせなさとどう向き合うのでしょうか。

復讐劇が始まるわけでもなく、出所したあとに自暴自棄になり事件を起こすわけでもなく、物語は静かに進んでいきます。被害者側の家族も、被疑者側の家族も、全ての登場人物がよくできた人たちだなと。言葉で表すと陳腐になってしまうのですが、器の大きさを感じました。この伝わりきらない人物像！ぜひ、読んで感じてほしいです。

告解
薬丸岳
講談社