言葉や文字は受け取り手によって盾にも矛にもなります。今回の小説はそんな言葉の大切さ、鋭さ、温かさを教えてくれました。何も暴言を吐いたわけではありません。“我慢”と“お母さん”と言う言葉です。普段何気なく口にする言葉でも、タイミングや雰囲気によってはすごく心に残る1言になるのです。
主人公の女の子は、父子家庭です。寂しくて、遅くまでバイトを入れて、できるだけ家で過ごす時間を短くしています。そんな彼女のバイト先のカフェによく来てくれるのが、“黒縁さん”。黒縁メガネをかけているからでしょうね。分かりやすいです。ひょんな事から話すようになった2人。さて、主人公は、黒縁さんは、どのように変わっていくのでしょうか。
恋愛ものとはまた違うし、青春ものにしては何も起こらないし、ネグレクトでも大きないじめもありません。少し疲れている時に読むとじんわりと心を温かくしてくれるお話です。
真夜中の底で君を待つ
汐見夏衛
幻冬舎
嘉納 芙佐子
リブロ 江坂店