時空犯

今回紹介させて頂く作品は、犯人が時空間を自由に行き来するようなものではなく、しっかりとしたミステリーです。

１日が何回も繰り返されるとしたらどうしますか？ある科学者は子どもの頃に不思議な体験をし、１日が何回も繰り返される体験をしました。博士だけではなく、世界全体が何回も繰り返されるのです。その記憶を覚えていられるのは、ある物質に触れた者だけです。集められた８人は治験としてその物質に触れます。繰り返される１日の中で、殺人が起こるのです。

この実験の説明が具体的で本当に起こっていそうに思えて、序盤でハラハラしていました。フィクションなのに、小説だと思って読んでいるのに、この本を読んでいる今日は実は３回目なのかも知れない。など勝手に想像し怖がっていました。それぐらいリアリティがあるのです。

殺人も巻き戻されたら生き返ります。残念ながら殺された人たちは犯人の顔を見ていません。どんなタイミングでどう殺されたのかを説明し、推理していくのです。殺人方法に魔法や他の薬などが使われたらシラケたと思います。ですが、動機も分かりやすく現実的な方法でした。潮谷さんの作品は３作品目なのですが、少しだけ未来を描いて、でもしっかりとしたミステリーなので楽しめます。注目している作家さんです。

時空犯
潮谷験
講談社