犯罪をおかした人の中には反省もせず再犯する可能性を秘めた人がいます。また法的には裁かれなくても非道な人がいます。そんな犯罪者たちの被害を受けた本人や家族たちのやり切れなさはどうすれば良いのでしょうか。
この小説はそんな被害者家族の一人を主人公とした物語です。娘を殺された父親、でも、被疑者に極刑を求めませんでした。それは一体なぜなのでしょう。罪を犯した犯罪者たちに復讐をする小説は見かけることがあります。が、何となく後味が悪かったり、段々と復讐しているほうが悪者に見えてきます。
しかし『極刑』はどちらかと言うと、被疑者側の心情が描かれているので、モヤモヤが少なく読み終わることができました。“楽しかった!”と終わるものではありませんが、被害者家族も加害者家族も、事件の当事者になった時点で人生が狂ってしまうのだなと思いました。
小倉さんのデビュー作、ぜひ読んでくださいませ。目の離せない作家さんがまた一人増えました。
極刑
小倉日向
双葉社
嘉納 芙佐子
リブロ 江坂店