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    【連載】 リブロプラスとは何か(4)
2019年09月02日

違いがわかる。
【連載】 リブロプラスとは何か(4)

例えば、ファッション誌の売場の前に立つ。興味のない人にとっては同じような雑誌がたくさん並んでいるように見えるかもしれない。個体識別できず、「ファッション誌」という大きな括りで把握する程度。興味がないのだから、それでいいのだ。逆に、詳しい人なら雑誌によって違った個性があることをよく知っている。当然、作り手が違う。それぞれの雑誌に個別の市場戦略があり、想定読者層があり、編集方針がある。技術や製作費も違うだろう。いろいろある中から読者は自分に必要なものを選ぶ。強い関心をもってみれば、ひとつとして「同じような雑誌」はなく、好みに合うものは限られていて何でもいいわけではない。

雑誌の売場を担当することになるスタッフには、登場するモデルの年齢と、掲載されている商品の価格帯がひとつの目安になると助言するだろうか。しかし、ここでは雑誌の話がしたいのではなかった。興味のない人には違いがわからない。詳しい人なら違いがわかる。何でもそうである。「書店」の違いについても、同様だ。

かねて書店の同質性を揶揄する言葉に「金太郎飴」というのがある。どこを切っても同じ模様が出てくる金太郎飴のように、どこの本屋も同じような品揃えで違いがないじゃないかと批判的に使う。その論戦史に踏み込むとややこしくなるので避けるが、確かに大枠としては、書店(総合書店)のフォーマットは業界で広く共有されていて、地域差や個体差が小さい。全く見たことのないような書店に出くわすことは珍しく、全国どこにいっても書店といえばこういう店という凡その想定範囲内に収まるようになっている。便利だともいえるし、退屈だともいえる。

しかしそれは、ファッション誌の全部を「ファッション誌」と大枠で把握するのに似ている。一見、同じフォーマットを使っているように見えて、実は書店によって違った個性がある。詳しい人ならそれを知っていて、用途によって使い分ける人もいるだろう。

作り手にとってはなおのことである。それは、別のチェーン店との合併を繰り返してきた経験から強く感じている。同じような本屋に見えたとしても、作り方が全然違うのだ。旧リブロ時代(本稿では現存する店舗屋号としてのリブロを「リブロ」、昨年のリブロプラス設立時に消滅した法人としてのリブロを「旧リブロ」と表記する)、2000年にパルコブックセンターと合流したときもそうだった。同じセゾングループ出自の両者でさえ、レシピが違った。その違いには理由があった。市場戦略が、想定顧客層が、編集方針が違った。

だから、70年の歴史を誇る老舗書店オリオン書房との間には、もっと大きな違いがあるだろうと想像した。2018年9月、リブロプラス設立と同時に、私はオリオン書房の本拠地である立川のエリアマネージャーに任命された。(次回に続く)

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野上由人
営業本部長

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