東京・立川、オリオン書房。【連載】 リブロプラスとは何か(5) | NICリテールズ株式会社
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    【連載】 リブロプラスとは何か(5)
2019年09月09日

東京・立川、オリオン書房。
【連載】 リブロプラスとは何か(5)

2003年にリブロ汐留シオサイト店、2011年にリブロ福岡天神店の開店を店長として担当した。そのとき、開店後に売場を見た複数の人から「リブロっぽい店ですね」と言われた。リブロなのだからあたりまえと思われるかもしれないが、名前は同じリブロでも店舗によって立地・規模・商品構成等がそれぞれ違うので、「リブロっぽい」とはどういうことか、社内でも共通認識が言語化されているわけではなかった。そのとき言われた「リブロっぽい」は、きっとリブロ池袋本店の特徴の一部が切り取られてそこにあるような印象を与えたということなのだろうと思うが、その内容も明瞭ではない。

パルコブックセンターと合流したときには、パルコブックセンターの文芸中心主義を知り、それとの対比で、リブロの人文中心主義を認識した。サブカルチャー、ノンフィクション、ルポルタージュ。あるいは書店の伝統的な分類方法にうまく当てはまらない新しい切り口の本が登場したとき、パルコブックセンターなら文芸書の周辺に紐づけられていく傾向があり、リブロでは人文書の中に組み込もうとすることが多かった。

私の場合はリブロ育ちなので、自分で売場を作ると、それはリブロになる。なってしまう。リブロの作り方しか知らない。だから昨年、オリオン書房を担当するエリアマネージャーに就いたとき、私にとってはとても難しい仕事だと感じた。私は、オリオン書房の作り方を知らない。もし作り方が書かれた設計図やレシピがあれば、その通りに作られているか点検できるかもしれないが、そんなものはない。作り方も知らずに、いま目の前にある売場の状態をいいとか悪いとか、簡単には言えないと考えこんでしまった。

お客様がオリオン書房に期待していることは何か。それは70年の歴史があっての今だと思えばなおのこと、簡単にはわからない。長く勤めている人たちから話を聞き、どういう期待に応えようとしているのか、どういう書店でありたいか、オリオン書房の自己認識を探るところから始めるしかなかった。

ちなみに、リブロに比べると、オリオン書房は男性客比率が少し高い。リブロでは36%だが、オリオン書房では43%になる。百貨店やスーパーの書籍売場から始まったリブロは女性客比率の高さがひとつの特徴だった。老舗のオリオン書房のほうがむしろ標準的なのだろう。どちらにも偏らない、全方位型の書店だといえる。

分類別の売上構成比を比べてみると、オリオン書房はコミックや専門書の比率がリブロより大きく、雑誌や生活書、児童書はリブロのほうが大きくなる。もちろんこれは屋号別の「平均値」でしかない。実際には、店舗によって差異がある。

オリオン書房は立川駅周辺に4店舗(駅ナカ業態のPAPER WALLを含めると6店舗)を構える。社内競合が激しく、店舗ごとの役割分担を重視している。例えば、売上最大のルミネ立川店と、面積最大のノルテ店では、商品訴求の力点を変えようとする意識が強い。名前は同じでも違った店作りを競う(社内競合との差別化は、旧リブロにはあまりなかったことなので新鮮だった)。

誰に売るかが先にあって、何を売るかが次に決まる。先輩からよくそう言われた。誰に売るか。それは結果として誰に売ったかだけでなく、誰に売るつもりで店を作るかの選択が含まれる。それはショップコンセプトの基礎になる。立川駅周辺に密集する社内競合の厳しさゆえ、オリオン書房は名前が同じでも店舗によって異なるターゲットを設定してきた。ならばオリオン書房共通のコンセプトはないのか。それはおそらく、ある。しかし、すっきりと言語化されてはいない。リブロがそうであるように、「オリオン書房らしさ」もまた他者との比較において少しずつ輪郭を浮かび上がらせていくしかないのだろう。その過程で、お互いの自画像が見えてくるのなら、それも経営統合のひとつの効果と言えるかもしれない。(次回に続く)

【連載】 リブロプラスとは何か(1)「昔のリブロ」ではなく、現在進行形の話をしよう。
【連載】 リブロプラスとは何か(2)取次と書店。
【連載】リブロプラスとは何か(3)商品部の役割。
【連載】リブロプラスとは何か(4)違いがわかる。
【連載】リブロプラスとは何か(5)東京・立川、オリオン書房。
【連載】リブロプラスとは何か(6)営業の中心は立川にある。
【連載】リブロプラスとは何か(7)新しい店をつくる。
【連載】リブロプラスとは何か(8)BOOK PARK miyokka!?
【連載】リブロプラスとは何か(9)世界の全体を総覧できる場所。
【連載】リブロプラスとは何か(10)「日販店舗運営株式会社」

 

野上由人
営業本部長

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